【IRR】米新政権発足に伴う強硬派復活で一段安も

 2017年は欧州をはじめ世界でいくつか重要な選挙が行われる予定ですが、5月19日のイラン大統領選は、今後の地政学を変える可能性から特に注目されそうです。1月20日に発足する米国のトランプ政権によるイラン政策は選挙の行方を左右するとみられ、通貨リアルの値動きにも反映されるでしょう。

 間もなく任期を終えるオバマ米大統領の外交の功績として、長年対立関係にあったキューバ、イランとの関係改善が挙げられます。2005年にイランの大統領に就任した保守派のアフマディネジャド氏のもとで加速した核開発疑惑から国連や欧州連合(EU)、米国が2010年に経済制裁を強化したことでイラン経済は打撃を受け、マイナス成長に陥りました。2013年に穏健派のロウハニ氏が大統領に就任すると、核開発協議が大きく進展します。イランによるウラン濃縮能力削減などの合意内容の履行が国際原子力機関(IAEA)で確認され、核開発疑惑に関わる経済制裁は解除されました。

 解除の内容は、資産の凍結や原油輸入の禁止などです。イランは、高度な技術と豊富な資金を持つ外国企業との交渉を本格化させ、制裁により撤退した外国企業を呼び戻す動きを加速させています。また、原油の輸出解禁により国内総生産(GDP)を大きく押し上げるとみられます。しかし、イラン経済は制裁が解除されても、回復ペースが当初見込まれたほどではないとの指摘もあります。イランリアルの値動きをみると、制裁解除決定を受け、いったんは下げ止まりましたが、このところ下落トレンドが再開。つまり、ほぼ一貫してドル高・リアル安が続いています。

 イラン経済回復の遅れは、米国が制裁を再開するとの根強い懸念が外国企業のイランへの進出を妨げているためです。実際、米共和党はイラン合意を失敗だったとしており、トランプ次期大統領も選挙期間中、合意の破棄を主張していました。今後、合意の取り消しという事態となれば、穏健派のロウハニ大統領の下で黙っていた保守強硬派が勢力を盛り返すかもしれません。ロウハニ氏にとって痛いのは、穏健派の後ろ盾で保守派からも信頼の厚かったラフサンジャニ元大統領が1月10日に死去したことです。これにより、5月の大統領選で強硬派の候補者を求める声が強まる可能性があります。

 一方、経済制裁を受けていたここ数年間、諸外国との連携を強めてきたことが地政学リスクに発展するかもしれません。ロウハニ氏は2016年1月の中国の習近平国家主席との会談で「中国は、苦しい時期も常にイランを支持してきた。両国関係をさらに発展させるべきだ」と謝意を示しています。また、トルコやパキスタンなどの近隣諸国との互恵関係も深めてきました。パワーバランスでサウジアラビアとは関係が悪化していますが、中国やロシアなどと対米強硬路線で一致することも考えられます。