【EUR】節目1.2ドル突破に「壁」?

ドラギ欧州中銀(ECB)総裁が米ワイオミング州ジャクソンホールでの年次総会で、足元のユーロ高に言及しなかったことを手がかりに、25日NY市場ではユーロ買いが強まりました。週明け以降、ユーロ・ドルの節目1.2ドル上抜けが注目されそうです。

ECB総裁はユーロ高を容認したのか


報道によると、ドラギ総裁はジャクソンホールでの年次総会の後、質疑応答のなかでユーロ圏のインフレは目標の2%上昇に向かっている、と自信を示しました。その反面、目標達成には辛抱強さが必要であり、足元の緩和的な金融政策を維持する正当性を強調しました。タカ派かハト派かと問われれば、間違いなく後者でしょう。9月7日開催の次回理事会では、資産買入れプログラムの縮小を打ち出すと見込まれていますが、議論は分かれるかもしれません。

ユーロ・ドルはこの後、1.1860ドル付近から1.1940ドル付近まで上昇しました。最近のユーロ買いポジションが膨らんでいることから、ドラギ総裁のハト派寄りの発言で持ち高解消のユーロ売りに振れる、との予想に反した値動きでした。7月20日に開催されたECB理事会ではユーロ高を懸念する意見が議事録(8月17日公表)で明らかになりましたが、ジャクソンホールで同総裁からユーロ高をけん制する発言が聞かれなかった、というのがユーロ高となった要因のようです。

欧米中銀当局者の発言内容は織り込み済み


ユーロ・ドルは、2015年1月以来の節目1.2ドルに接近していますが、その水準を回復できるでしょうか。ドラギ総裁に先立って講演したイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、テーマの「金融の安定」に忠実で、金融危機後に導入した規制が機能したことにより安全性が著しく高まったとし、一部の規制の緩和に前向きでした。ただ、こちらも引き締めに積極的でなかったため、ドルは売られました。28日のアジア市場ではイエレン議長のハト派寄りの見解を消化しようと、ドル売り先行が見込まれます。

しかし、ドラギ総裁はユーロ高を容認したわけではなく、金融政策もハト派寄りだったので、週明け以降のユーロ買いは長続きしないとみています。また、イエレン議長の発言も織り込み済みで、ドル売りもそれほど強まるとは思えません。ユーロ・ドルの1.2ドル付近はオプション絡みのオーダーも膨らんでいると観測されており、防戦売りなどでそう簡単に上抜けはできないでしょう。

トランプ政策次第でドル買戻しも


トランプ大統領が今年1月の就任以来、「オバマ色」を薄める政策を進めていることを考えれば、イエレン議長の来年2月の任期満了での再任はあり得ないでしょう。現時点で後任と目されるコーン国家経済会議(NEC)委員長が、メディアとのインタビューで米国企業によるドルの本国還流(リパトリ)について言及しましたが、それが話題になりそうです。それだとドルの買戻し基調が強まるかもしれません。ただし、トランプ大統領の「壁」建設発言で債務上限問題も懸念され、ドル買いも限定的となるでしょう。ジャクソンホールのイベントは、強い手がかりとはならないでしょう。