【ARS】当面下値を模索

 新興国通貨は政治情勢が大きな変動要因となる。アルゼンチンペソは、その典型だろう。2000年以降、ポピュリズム政治によってペソの価値は大きく低下。昨年11月の大統領選を受け12月に新政権が発足後、為替制度改革が着手された。だが、その後も大幅な下落に見舞われており、ペソは早くも正念場を迎えている。
 アルゼンチンは2001年から2002年にかけての債務危機で通貨の切り下げと国内経済の混乱からインフレに陥った。中道左派政権は国民の不満を逸らそうとポピュリズム色を強め、このためさらに経済情勢が悪化するという悪循環をたどった。
フェルナンデス前政権による2015年11月の大統領選をにらんだバラマキ政策で同年4-6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は回復を示したが、一方で財政赤字を拡大させる結果にもなった。選挙対策は実らず、アルゼンチン大統領選ではフェルナンデス氏が推す中道左派の対立候補は、中道右派の前ブエノスアイレス市長、マウリシオ・マクリ氏(56)に破れた。
 昨年7月、ギリシャの国民投票で債権団による財政緊縮策の受け入れが拒否された際、フェルナンデス前大統領は選挙結果について「民主主義と国家の尊厳の勝利」とツイッターに賞賛のメッセージを送った。しかし、ギリシャは、急進左派のチプラス首相が民意に反し緊縮財政策の受け入れる現実路線にシフト。また、アルゼンチン大統領選でも長年にわたるポピュリズム政治から脱却する道が選択された。
 マクリ新大統領は停滞するアルゼンチン経済の立て直しが喫緊の課題だ。低水準に落ち込んだ外貨準備を増やし貿易などの規制緩和に乗り出した。ただ、為替取引規制の撤廃を受け信用力の低いペソは国際金融市場にさらされることになり、一段安の展開に。輸出競争力の回復を上回るインフレ率が同国経済をさらに圧迫した。この10年あまりの間に2度もデフォルトを経験したアルゼンチンが国際金融市場で信用を回復するには、まだ時間はかかりそうだ。

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