【USD】次期大統領はドル余りを回避できるか

 「為替は市場のなかで決まる」「強いドルは米国の利益」――最近はあまり聞かなくなったが、米金融当局者はドル高についてメディアから質問されると必ずこう答えていた時期があった。2000年代初頭のことである。「一般論として為替レートは市場の需給によって決まるが、米国は強いドルを望んでいる」という意味だ。もっと言えば、「需給などは関係なく、米国が強いドルを望んでいるのだからドル高になって当然だ」という基軸通貨国の横暴だ。米国はこうして外交や安全保障だけでなく、金融でも世界中に敵を作ってきた。
 2015年3月、中国が主導する新たな国際金融機関であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国が参加を正式表明したとたん、雪崩を打ったようにドイツやフランスなど欧州諸国が追随する動きが見られたことはまだ記憶に新しい。いじめっ子(米国)に苦しめられた多くの生徒たち(欧州・アジア諸国)が、ケンカの強そうな転校生(中国)に擦り寄っていくような構図だった。ホワイトハウスは、盟友とみていた英国の“裏切り”に対し「国家の決断だ」と皮肉まじりの声明を出すのが精一杯だった。
 欧州は長年にわたり米国の都合に合わせて政策を変更しなければならない米国主導のブレトンウッズ体制に嫌気がさし、ドルに代わる基軸通貨を作るという理念からユーロの創設に取り組んだが、ギリシャ問題などで暗礁に乗り上げた。欧州諸国はその夢を人民元に見出したのかもしれない。
 国際通貨基金(IMF)が特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用したことで、日本もそうだが、オーストラリアやインド、韓国など貿易相手国は今後、嫌でも人民元を保有する必要がある。人民元は特定地域内だが石油取引も可能になっており、ある意味で基軸通貨の道を歩み始めた。人民元の流通が拡大する一方、ドルは縮小していくことが予想される。将来は現在の原油のように、ドルは世界的に供給過剰となって価値が下がり、中南米や日本が買い支える通貨になるのかもしれない。
 米大統領選の候補者選びが本格化し、民主、共和両党は2月1日にアイオワ州で党員集会を開催した。民主党は米国初の女性大統領を目指す本命のクリントン元国務長官にサンダース上院議員が僅差に迫ったほか、共和党は独走とみられたトランプ氏が敗れるなど波乱がみられた。夏までに指名候補を絞り込んでいく過程で、外交から安全保障、金融まで政策の大転換がみられるか注目したい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする