【USD】116円割れで新たな局面入り

 日銀が1月29-30日に開催した金融政策決定会合で導入を決めたマイナス金利政策は、末期ガンの患者に投与するモルヒネのようなものかもしれない。円高という「痛み」を緩和するだけで、根本的な治療ではないからだ。
 2月8日の欧米市場で、ドル・円は底堅い展開になると思われていたが、マイナス金利導入の発表後、ドル・円は121円69銭まで上昇した後、1週間で5円も下落していたので、値ごろ感から押し目買いを入れる展開になるとみていた。ドル・円の1週間の予想レンジを4-5円とみることはあるが、実際に5円も動くことは年に数回あるかないかだ。中国市場が春節で今週いっぱいは休場になるため、リスクが軽減されるとの心理的効果も、ドルの買い戻しを後押しすると考えた。少なくとも、アジア市場ではそうだった。
 ところが、この日の夕方から夜にかけて欧州市場では「急変」する。日中限定的な値動きだったユーロ・ドルが上昇し始めたと思ったらその後、急落。ユーロ・円の急落にけん引されたのだ。つまり、いっせいにリスク回避の円買いに振れ、主要通貨売り・円買いとなった。ドル・円は117円半ばから後半に差し掛かる水準で推移していたのが、あっという間に117円付近まで値を下げ、117円を割り込んだ。ツイッター上では市場関係者が「一体何が起こっているんだ」とつぶやいていた。
 筆者は、1月30日付の記事に掲載した「円安は進めど」で、「株価が想定通りに上昇しなければ、ドル高・円安は限定的になる。それでも、乾いた雑巾を絞るように日銀は株高を支え続ける政策を実施していくだろう。そうでなければ、日銀による政策の手詰まり感を見透かした海外勢が日本売りを強める可能性があるからだ」と書いた。この時点では、日本売りを強める時期はもっと後になると考えていたのだが、想定よりもかなり早く来たようだ。
 2014年10月31日に日銀が決定した追加金融緩和「黒田バズーカ」はドル・円相場を押し上げ、同年11月から2016年2月初旬まで1年3カ月の間、116円付近が下値を支える水準となっていた。その意味で、サプライズだったこの「黒田バズーカ」の効果は1年3カ月も続いたといえる。対照的に、マイナス金利の効果はたったの1週間。日銀は今後、マイナス幅を拡大していくようだが、早くも次のモルヒネを準備しなければならなくなった。

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