【SAR】サウジのペッグ廃止論議は一服か

 原油価格が記録的な安値・高値となるたびに取りざたされる産油国のドル・ペッグ制維持の論議。昨年はカザフスタンとアゼルバイジャンが相次いでペッグ制を廃止しており、「次」は政策運営に不透明感が高まるサウジアラビアとみられていた。しかし、年初からの米追加利上げ観測の後退とともに、この議論は小休止しそうだ。
 中央アジアの産油国、カザフスタンは昨年8月、通貨テンゲを変動相場制に移行させた。理由は、原油安のほか、ロシアをはじめ交易関係が深い周辺国の通貨下落による自国経済への悪影響だ。カザフスタンはそれまでの1ドル=185-188テンゲ付近ではレートを維持できなくなり、変動相場に切り替えた。すると、あっという間に250テンゲ付近まで急落。その後は270-280テンゲのレンジで落ち着くかとみられたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が12月12-13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で9年半ぶりに利上げを決定したことに加え、年初からの市場の混乱もあり、391.10テンゲまで下落している。
 また、同じ中央アジアのアゼルバイジャンも昨年12月21日、カザフスタンと同じ理由で通貨マナトをドル・ペッグ制から変動相場制に移行すると発表した。FRBの利上げを受け、ドルに対して弱まる自国通貨を買い支えるのは困難と判断。この後、同国通貨は1ドル=1.05マナトから1.55マナトまで急激に値を下げた。今年入って一時1.60超マナトまで下落した。
 途上国は自国通貨のレートが不安定になることを避けるため、ドルなどの主要通貨に事実上固定し、為替を安定させてきた。産油国はドル決済のため、ドルに固定していれば為替の変動の影響を受けないで済む。しかし、途上国は一般に自国通貨が米ドルに対して弱くなるため、米ドル売り・自国通貨買いの為替介入が必要となり、国家の外貨準備が潤沢でないとペッグ制を維持できなくなる。カザフスタン、アゼルバイジャンとも外貨準備が大きく減少していた。
 しかし、年初からの市場の混乱を受け、FRBによる追加利上げ観測は次第に後退しつつある。当初は年4回の利上げが市場コンセンサスだったが、足元では3回以下がメーンシナリオとなった。これを受け、「次」と目されていたサウジアラビアだが、通貨リヤルの切り下げを見込んで先物は一時大きく下落していたものの、次第に落ち着きをみせている。サウジは、原油安で外貨収入が減少するなか今後の経済政策には不透明感が残され、米国経済や原油価格次第でペッグ制廃止論議は再燃する可能性はあるが、ひとまず一服したといえそうだ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする