【GBP】孤立主義再燃で当面はポンド売りか

 英仏両国を結ぶ海峡トンネルの構想は1700年代から存在していたようだ。英国侵略を狙うナポレオンが最初に着手して以来、建設プロジェクトはその都度、主に英国側の主権問題でとん挫。実に250年以上の時を経て、1994年11月にようやく開業にこぎつけた。当時のサッチャー英首相とミッテラン仏大統領がトンネル内の国境付近で握手する写真を見た記憶がある。英国の孤立主義政策は、欧州の鉄道ネットワーク構築をきっかけに崩れたと思っていた。
 ところが、あくまで自国の主権を重んじる国民性は廃れていなかった。キャメロン首相は2015年の総選挙の過程で欧州連合(EU)からの独立に関し、有権者に対し国民投票の実施を約束していた。今年2月19日のEU側の改革案を受け、英国政府は6月23日にEUからの離脱の是非を問う国民投票を実施することを2月20日に決定した。キャメロン首相は、結果として独立心旺盛な国民性に火をつけてしまったようだ。この機に乗じてジョンソン・ロンドン市長が離脱の支持派を取り込んでいるほか、2014年の住民投票で英連邦残留を決めたスコットランドも再び独立に向けた動きが活性化する可能性が浮上し、自らの政権運営も危うくなってきた。
 英国はユーロ圏経済の重要な一角を占める立場でありながら、通貨に関してはポンドを維持し、ユーロへの参加を見送った。ギリシャをはじめとする南欧諸国の債務問題では直接的なリスクから免れ、ドイツやフランスなどとユーロ体制維持に腐心することなく独自の道を歩むことができた。しかし、今後はこのままでは済まなくなってきた。仮に、離脱を決定した場合、年間100億ユーロ超(EU全体の10%あまり)の拠出金が解消する以上に経済的なダメージが大きいとみられる。
 残留を決めたとしても、国論を二分する選挙の後は同一政権による合意形成は難しくなり、結果的に政局としてしこりは残る。こうした政治リスクを考慮すれば、ポンドは当面買いにくい。少なくとも国民投票までの向こう4カ月間は利上げ論議が封印されるため、下値を支える手がかりが見当たらない。ポンドは、比較的リスクの少ないスイスフランや円に対して弱含むだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする