【JPY】マイナス金利とG20とゲスの後知恵

 1月30日配信の「円安は進めど」では、日銀が1月28-29日の金融政策決定会合でマイナス金利を導入したことについて、このタイミングしかなかったと書いた。理由は、次回3月は年度末を控え株価を押し上げることで企業の財務内容を良く見せるドレッシング効果、4月と6月は参院選を控えた市場対策と、いずれも安倍政権の意向に配慮した政策運営と受け止められる可能性があったからだ。
 確かに、国内政治情勢から、日銀の追加金融緩和のタイミングはこの時をおいて他になかっただろう。ただ、筆者は当時、20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)の2月26-27日の開催日程を考慮するのを忘れていた。今になって振り返ると、G20の日程こそ日銀をマイナス金利導入に走らせた最大の理由だったかもしれない。
 昨年9月4-5日にトルコ・アンカラで開催されたG20では、中国の人民元切り下げを念頭に「市場原理に基づく為替制度への移行を目指す」との文言が声明に盛り込まれ、「通貨の競争的な切り下げを回避する」との見解で一致した。中国・上海で開催された今回のG20でも、「通貨の競争的な切り下げを回避する」と再び明記され、「過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」として極端な通貨安政策に釘を刺す内容となった。
 上海G20の開催は2015年12月初旬に決定したとみられる。2016年の年初から中国人民銀行により対ドル基準値のレートが元安方向に設定されたことを受け、昨年8月同様、金融市場に混乱が広がった。市場の動揺が2月に入っても続いたことを踏まえれば、上海G20でも通貨安競争をけん制する方針は踏襲される、と日銀は容易に予測できたはずだ。
 米連邦準備制度理事会(FRB)が2015年12月15-16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で9年半ぶりの利上げを実施した直後に日銀が打ち出した「補完措置」は、2016年1月以降の追加金融緩和への布石と筆者は理解した。FRBが利上げ後に引き締め姿勢をやや後退させたことは、日銀が追加緩和を実施しやすいムードを醸成した。日銀の1月の決定会合でのマイナス金利導入は、現時点で内容的には失敗だがタイミングとしては絶妙だったと思う。
 ただし、上海G20で過度な通貨安政策をけん制された以上、日銀が今後一段の追加金融緩和を進めにくくなったのは確かだろう。米大統領選の有力候補者が日本や中国の通貨安政策を批判していることもある。日本は3月以降、通貨安政策なしで株安に対峙しなければならなくなった。

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