【USD】9年半ぶりの米利上げは正しかったのか

 3月4日発表の2月米雇用統計で、失業率は8年ぶりの低水準となった前月と変わらずの4.9%、非農業雇用者数は予想の+19万人を大きく上回る+24万人となった。これらの数字を見た限りではドル・円は通常1円程度は上昇するのだが、今回は30-40銭にとどまり、ドルはその後、むしろ売られた。米追加利上げ観測の後退が底流にあるため、同時に発表された時間当たり賃金の減少がクローズアップされ、売り材料となったようだ。
 米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年12月、2006年6月以来、9年半ぶりに利上げに踏み切った。これにより、2016年の3月、6月、9月、12月と四半期ごとに計4回の追加利上げを想定するのが市場のメーンシナリオとなった。しかし、2016年は年初から市場が混乱し、1月26-27日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)FRBは早くも「ハト派」的なスタンスに転じた。市場の混迷はさらに深まり、2月時点で「年内は1回できるかどうか」とささやかれていた。
 今から振り返ると、9年半ぶりの利上げは果たして正しかったのか、疑問が生じる。2015年のFRBは市場の催促に対し「6月には」、「いや9月には」と、FOMC会合のたびに利上げを先延ばしする受け身のスタンスが目立ち、あげく追い詰められるように12月に実施した。利上げムードはずいぶん前から広がっていたため新興国は通貨安に悩まされた。利上げの織り込み期間が長引いたドルも、12月の実施時には市場予想の125円まで到達する余力などまったく残っていないように見えた。
 3月4日の雇用統計発表後の値動きをみてもわかるように、3月15-16日のFOMCでの利上げは見込まれていない。米大統領選の指名候補者選びが本格化するなか、ドル高政策への批判も広がり始めたため、今年は6月、9月も利上げはできないだろう。そうなると大統領選が終わった後の12月しかチャンスはない。もちろん、利上げが「勝ち」、利下げは「負け」というものではなく、無理に実施する必要などない。「せっかく実施したのだから」とか「1回だけだと判断ミスと思われるから」などというムードがFOMCに広がったとしたら、それこそ本末転倒だ。

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