【RSD】反転に乏しい手がかり

 米ワシントンにある国際通貨基金(IMF)本部ビルの地下には、各国紙幣が展示されている。ひときわカラフルで目に付くのはセルビアディナール(RSD)だ。ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の悲惨な過去を消し去りたいセルビア人の思いが伝わってくるようだ。ユーゴスラビア解体の過程で最大勢力のセルビア人は民族浄化により1992年から3年間でボスニア・ヘルツェゴビナ住民など20万人が死亡した。
 セルビアは内戦後、国家を立て直すため欧州連合(EU)加盟に向け交渉を進めている。2011年10月には逃亡中のラトコ・ムラディッチとゴラン・ハジッチの身柄拘束が評価され、欧州委員会から加盟候補国に認定された。2008年にセルビアから一方的に独立を宣言したコソボとの関係から認定はいったん取り消されたが、2012年3月に正式な加盟候補国として承認された。加盟交渉は2014年1月から正式に始まった。同年3月に実施された議会選挙では中道右派のセルビア進歩党とセルビア社会党の連立与党が圧勝し、有権者の支持を得ている。
 こうした政治的な取り組みによってセルビアのEU加盟への期待感からディナールは2013年から2014年にかけては対ドル、対ユーロで上昇した。しかし、その後は米国の利上げ方針の影響で緩やかなディナール安が続いている。足元では1ドル=110ディナールで推移しているため、1ディナール=1円超というレートになる。余談だが、日本たばこ産業(JT)が2006年に日本企業として初めて進出した。現在、セルビアのタバコ市場で約15%のシェアを占めるなど直接投資の成功例かもしれない。
 セルビアは失業率が約20%で高止まりし、公的債務も国内総生産(GDP)比6割程度と高い。で投資や参入市場の拡大が見込めるほか、ユーロ加盟を錦の御旗に財政支出削減に取り組めるメリットがある。一方で、難民受け入れ問題やユーロ安方向に対応しきれるかなど、不安な点もある。ディナールは足元で対ドル、対ユーロで下落しており、反転の材料は見当たらない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする