【JPY】「アベノミクス」終えんは本当か

 今、2012年のドル・円のチャートを眺めている。「アベノミクス」の象徴である長期ドル高・円安トレンドが始まったのは間違いなくこの年だった。前年3月に発生した東日本大震災の後、過度なリパトリエーション(本国送還)により、2011年10月31日にドルは75円54銭まで下げ、それまでの最安値だった1995年4月19日の79円75銭を更新。ドル・円は2012年に入っても76円付近で推移していた。震災後に菅政権、野田政権など政府サイドからヒアリングを受けた旧知の外為ストラテジストはこの頃、円安への政策転換を主張した。
 2012年2月14日、外為市場は思いもよらない展開となった。日銀が金融政策決定会合で市場の予想に反し金融緩和に踏み切ったのだ。「バレンタイン緩和」である。ドル・円は77円半ばから1カ月後には83円までドル高が進んだ。筆者はこれが長期ドル高・円安トレンドへの転換点だったと考えている。夏にかけて一度失速し、8月にドルは77円台まで値を下げた。そして、秋口に入り徐々に衆院解散ムードが広がると、金融緩和を打ち出していた当時の野党・自民党の政権奪還への期待から、再びドル高・円安基調となった。そして、11月14日を迎える。
 当時の野田佳彦首相と安倍晋三・自民党総裁(現首相)との党首討論で、野田首相は議員定数削減法案への賛同を条件とするなら2日後の11月16日に衆院を解散してもいいと突然言い放った。不意を突かれた安倍総裁は瞬時に反応できず、やや間を置いてから、「『解散する』と言いましたね」などと弱弱しく切り返した。金融市場は安倍総裁よりも反応が速く、すでにドル高・円安に振れていた。民主党政権の野党転落が必至の情勢だったことを考えれば、「アベノミクス」の起点はまさにこの時だったといえる。ちょうど1カ月後の12月16日に行われた第46回衆院選で、大方の予想通り自民党が圧勝し、第2次安倍政権が発足。12月末のドル・円は86円後半まで浮揚していた。
 第2次安倍政権の発足から3年あまり。この間ドル・円は一時125円半ばまで、実に4割超も上昇した。しかし、2016年は年初からの市場の混乱で円高基調に振れている。安倍首相は最近の米紙とのインタビューで為替介入をけん制したと受け止められる発言をして世界中に円買い安心感を与えてしまった。2014年10月31日の「ハロウィーン緩和」が「アベノミクス」を加速させたとすると、自らの失言によって、それ以前の水準まで円高を招いてしまったのは皮肉だ。さらに、今月中旬以降は米国の企業決算が発表され、業績の低迷ぶりがより鮮明になる公算だ。米株安・日本株安・円高は避けられそうもなく、「アベノミクス」の終えんと指摘されても仕方ないだろう。

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