【USD】「バーチャル介入」の有効期限

 米早期利上げ観測と日本の通貨当局による為替介入期待はともに後退し、ドル・円に下方圧力がかかっている。日米の要人による「口先介入」とういバーチャルな手段でドル安・円高のペースを遅らせているが、このままいけばドル100円割れは時間の問題だろう。
 4月27-28日に開催された日銀金融政策決定会合での追加緩和見送りが嫌気され急激なドル安・円高が進んだことを受け、麻生太郎財務相は30日、「投機的な動き」を憂慮し「適切な対応」に態勢を整えていると発言。続いて安倍晋三首相は5月5日、訪問先の英国内での記者会見で、麻生財務相同様、「投機的な動き」との認識を示し、状況を注視して「必要に応じて対応」する考えを述べた。こうした「口先介入」で日本の為替介入期待が再燃し円買い地合いが反転したものの、その効き目は薄れかけていた。
 その後、5月6日21時半に発表された4月米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びの鈍化が嫌気され、ドル・円は一時106円半ばまで下落した。日本は為替介入できないとの根強い懸念があるため円高は加速しやすく、来週にかけて105円台に下落してもおかしくない状況だった。しかし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が米紙のインタビューで連邦準備制度理事会(FRB)による年2回の利上げの可能性に言及したことが材料視され、ドル・円は107円台まで値を戻している。
 米国の場合、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を見極めるために6月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げは見送る公算だ。11月の大統領選を控え9月の実施も厳しく、12月にできるかどうかだ。つまり、年2回は現実的ではないとみている。一方、日本の実際の為替介入は、日米の力関係や国際社会での理解という点で現実には難しいだろう。また、1国のみで中途半端な規模で対応しても逆効果になるリスクもあろう。
 放っておけば100円を割り込むドル・円を、「口先介入」というバーチャルな手段で支えているにすぎない。日米の当局者による強気な発言が今後続いたとしても、有効期限は1カ月もないだろう。ただ、政府が足元の円買いを本当に「投機的」と考えているのなら実弾投入は不可欠だ。日米の「口先介入」の効果が続いている間に具体的な戦略を練り、今月26-27日開催の伊勢志摩サミットで各国の合意を取り付けることを、市場関係者は安倍首相に期待しているようだ。

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