【TRY】「内弁慶」の大統領につける薬

 トルコリラ(TRY)は長期的に売り圧力が強まりそうだ。トルコのエルドアン大統領が政治的権力をさらに強める動きがみられ、金融政策や国内経済の成長などに影響を与える可能性があるためだ。大統領の政権運営の拙さにより、ドル売り基調を背景としたリラ安是正のチャンスを逸するかもしれない。
 複数のメディアによると、トルコのダウトオール首相は5日、首相と公正発展党(AKP)の党首を辞任する考えを表明した。トルコでは大統領は中立性が求められているが、エルドアン大統領はAKPを離党後も党運営などを掌握。ダウトオール氏との確執が伝えられている。こうした政治情勢が嫌気され、ドル・トルコリラは2.93リラ付近まで上昇(リラは下落)している。
 トルコリラは、年初からの金融市場の混乱を受け1月15日に一時3.05リラまで下落した。しかし、米早期利上げ観測の後退を背景に新興国通貨は相対的に値を切り上げ、トルコリラは4月20日には2.80リラまで値を上げていた。この日は、トルコ中銀のチェティンカヤ新総裁が就任後初の金融政策委員会に臨み、基準となる1週間物レポレート(7.50%)と翌日物借入金利(7.25%)を据え置く一方、上限の翌日物貸出金利を10.50%から10.00%まで引き下げた。
 市場の予想通りだったことは好感されたが、上限金利引き下げは大統領の圧力を受け今後も続きそうだ。トルコは2014年以降、政治情勢の不透明感がリラ売り要因となってきた経緯があり、現在のような政局はリラ安に振れやすい。実際、トルコ中銀の利下げに関し政治圧力に屈したとの判断から、格付会社が格下げしたこともある。原油価格が底入れするなか、大統領自身の強権によって国内経済や金融市場が歪められれば再び通貨安に逆戻りし、トルコ経済にはインフレ圧力が高まって負のスパイラルに陥るだろう。
 辞任を表明したダウトオール氏は直近のロシア紙スプートニクのインタビューで、昨年11月にトルコ領空内でトルコ軍がロシア機を撃墜した件に言及。トルコとロシアは相互に必要とし合っており、以前のような友好的な関係を構築したいとの考えを語っている。国際社会ではシリア情勢をめぐりロシアのプーチン大統領が発言力を高めたこともあり、エルドアン大統領にとってはダウトオール氏のこうした発言が逆鱗に触れた可能性もある。自国内で過度な権勢を振るう大統領につける薬は、通貨安が効果的だ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする