【USD】「トランプ大統領」の現実味にドル売り圧力

5月6日に発表された米雇用統計の下振れを受けドル・円はいったん下落したが、下値の堅さが意識されて反転し、ドル買戻しが強まった。日本の閣僚による口先介入もドルを浮揚させた要因で、足元はいわば「根拠なきドル高」という状況だ。しかし、ドルの上昇ペースを、佳境を迎えた米大統領選レースが弱めているという。
共和党の指名候補選びは不動産王ドナルド・トランプ氏が確実視されるなか、直近の世論調査ではトランプ氏の支持率が、民主党の有力候補であるヒラリー・クリントン氏と拮抗しているという衝撃的な結果が出た。「トランプ大統領」に現実味が増したことについて、旧知の外為ディーラーは「経済政策や金融政策、為替政策などといった高尚な次元ではなく米国がどこに向かっていくのか、どうなっていくのか、先の見えない恐怖感からドルは売られた」と指摘している。
米国のリベラル系インターネットメディア「TYT」は新聞やテレビといった従来型メディアに触れなくなった米国の若年層を取り込んでおり、大手メディアが過小評価しがちなバーニー・サンダース氏の主張を浸透させるのに貢献している。このメディアの最近の番組で、民主党の指名候補がクリントン氏に決まり本選でトランプと争う場合には「迷わずクリントン氏に投票する」と司会者が述べ、議論を巻き起こした。
今年の米大統領選は「エスタブリッシュメントVS非エスタブリッシュメント」の対立構造が鮮明になっている。富豪のトランプ氏は非エスタブリッシュメントを装い、共和党のエスタブリッシュメント候補者を次々に負かした。民主党も、非エスタブリッシュメントのサンダース氏支持者はクリントン氏をエスタブリッシュメントの代弁者とみなしているため、指名候補がサンダース氏でない場合、棄権するか一部はトランプ氏支持に回る可能性がある。「トランプ政権」に対するリベラル勢力の逆襲という狙いもあるようだ。
一方、クリントン氏がメール問題で起訴される事態となれば、民主党の指名候補はサンダース氏に決まる可能性もないとは言い切れない。この場合、党幹部は非エスタブリッシュメント候補で戦う覚悟がないため、混乱に陥るのは必至だ。これも「トランプ大統領」への強力な材料だ。7月18-21日の共和党大会、同25-28日の民主党大会に向け、外為市場関係者もますます目が離せなくなってきた。

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