【JPY】常識外れの報道で過熱感やや後退

 ヘリコプターマネー政策を実施する必要性も、実施の可能性もない――日銀の黒田東彦総裁が英国メディアとのインタビューで発言したことが7月22日夕の欧州取引時間帯に伝わり、金融緩和に消極的との観点から円買いが強まった。積極的なドル買い材料が乏しいなか、この発言を受けドル・円は106円台後半から一気に105円41銭まで下落した。
 このメディアがその後、インタビューは6月17日に実施したものだと発表し、円買いはいったん収束したが、明らかに常識を逸脱した報道と言える。自分がかつて所属していたメディアでは「インタビューはその日のうちに配信」がルールだった。どこのメディアでも、「インタビューは○○日に行われた」と明記するのが当然だ。インタビューされた人が発言してから配信までの間に状況が変わってしまえば、その発言自体が意味を持たなくなるか、発言者の意図と読者の受け止め方にギャップが生じる危険があるためだ。
 22日のケースは後者の例だ。日銀が6月15-16日の金融政策決定会合で追加緩和を見送った直後のタイミングで、黒田総裁へのインタビューは行われた。この時、冒頭の発言が配信されていたとしても、それほどインパクトはなかっただろう。しかし、その後6月23日の英国民投票による欧州連合(EU)離脱決定を経て、地合いは一変した。日本政府の経済対策の効果を高めるとの見方から、日銀の緩和期待が広がる最中に伝わったこの発言は、市場をミスリードするものだ。
 この「お騒がせ」に先立ち、ある米金融情報メディアは7月13日の前内閣官房参与への電話インタビューを翌14日に配信した。同参与が今年4月に訪米した際に会談した連邦準備制度理事会(FRB)の前議長は、日本のデフレ克服の手段として「ヘリコプターマネー」に言及し、日本政府が発行した永久国債を日銀が直接引き受けるというアイデアを提供した、という。この時も1円程度円高が進んだ経緯がある。
 英国メディアはそれを踏まえ、「そういえば、うちが6月に実施したインタビューでもヘリマネについて総裁は語っていたので、せっかくだから配信しよう」という顛末で7月22日の配信に至ったと推測する。「状況が違うのだから配信はやめるべき」という反対意見は社内的に当然あったはずだが、最終的には止められなかったのだろう。もっとも、メディア人ならだれでもおかしいと思うこのニュースにより、過熱気味のドル・円が少々頭を冷やされる効果はあったかもしれない。

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