【JPY】戦争突入で円はどうなる?

 小学生だったころ、夏休みに映画「はだしのゲン」を半ば強制的に見させられたり、親や親せきから疎開先での出来事などを聞かされたりした経験から、自分が生きている間に再び戦争など起ころうはずがないと長いこと信じ切っていた。しかし、最近の南シナ海での中国の主権をめぐる政治的な緊張や、日本政府による尖閣諸島のミサイル配備計画などをみると、考えを改めなければならないと思う時がある。
 米国のあるシンクタンクが最近、米中間の軍事衝突のシナリオを分析している。日本やフィリピンなど米国の同盟国と中国との間にある領土問題が偶発的衝突へと発展するのは、非現実的ではない。日本が現行の憲法を改正してしまうのなら、むしろそのシナリオの現実味は増していると言える。戦争は武器調達などの観点で為替が密接に関係するだろう。いざ戦争突入となった場合、円相場はどうなるだろうか。
 先の大戦で円相場はどのように動いたのか。1930年代は1ドル=3-5円で推移していたが、1941年12月の太平洋戦争勃発時、ドルは4.2円だったようだ。終戦の年の1945年には15円程度となり、急激なインフレを通じて1949年にはドル360円の固定相場制に移行していく。戦時中は戦況の悪化などを背景に円は売られたのだろう。ただ、その間、戦争特需への期待で株価が上昇していたので、戦争に勝利していたら日本への投資拡大という観点で円高に振れた可能性はある。
 想定される米中の衝突では、地理的に日本が「舞台」になる可能性はあるだろう。かつて戦中から戦後の混乱期には円安に振れたが、阪神大震災や東日本大震災の際はリパトリエーション(本国回帰)により、急激な円高に見舞われた。北朝鮮のミサイル発射時にみられるリスク回避の円買いのように、日本が攻撃を受けた場合には短期的に円買いに振れるのかもしれない。その後はハイパーインフレや超円安が待っている。1ドル1000円か、1万円か・・・想像できない。
 そうなればデフレは解消でき、巨額の負債を抱えた国家財政は健全化されるとの考えは愚かしい妄想だ。足元では政府債務残高の対名目GDP比率は、最悪だった戦時中と同じぐらいの水準に達している。財政の立て直しは個人の所得や金融資産の大きな目減りを意味する。71回目の終戦記念日を迎え、故・野坂昭如氏が書いた「戦争は、気づいた時にはすでに始まっている」との一文を思い出した。日本人は、また同じ間違いをするのだろうか。

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