【CUC】キューバペソ安は「急がず」

 1961年に国交を断絶した米国とキューバが昨年7月、国交正常化を電撃的に発表し、関係改善が進み始めた。来月には両国間に直行の定期航空便が開設される。キューバは当面、は観光産業などを柱に経済の開放を進める方針で、同国が将来的に優れた投資先になる可能性は高い。ただ、その進展のペースは、かなり緩やかなものになると思われる。
 米国とキューバの現在の関係は、約120年前のキューバのスペインからの独立が契機となった。宗主国の圧政に強いられていたキューバに米国が接近し、独立を支援したのをきっかけに、多くの米国企業がキューバに進出するようになった。ただ、富の多くは米国に吸い上げられてしまい、国民生活は窮乏化していく。1952年の政変で発足したバティスタ政権もこうした状況を変えられなかった。その後、米国企業排斥などを訴えて支持を広げたフィデル・カストロ(現在のラウル・カストロ国家評議会議長の兄)が1959年に革命政権を樹立。キューバは、当時革命運動を支援したソ連との関係を強化し、米国との国交断絶に至った。
 それから半世紀あまりの間、ソ連の崩壊など国際社会は大きな変貌を遂げた。カナダやメキシコ、ブラジルがキューバと良好な経済関係を構築していたことで、ここ数年で米国内にもキューバとの国交回復を望む声が出始め、中南米諸国との関係を重視してきたオバマ大統領は任期中の国交正常化を進めた。一方で、キューバは最近5年間の経済成長率は平均で3%に満たないなど、低迷が続いていた。キューバ経済を支えたロシアなど関係国の経済減速に影響を受けたためだ。キューバを米国との国交正常化に向かわせた背景にはこうした背景がある。
 キューバの産業資源は豊富とは言えず、当面は観光産業の活況に依存せざるを得ないだろう。キューバへの訪問者数は2015年に350万人あまりにのぼり、カナダからの渡航者が約130万人とダントツ。米国からの渡航者数は前年比+26%の17.5万人と2位のドイツに並んでおり、今後渡航の自由化が進めばさらに大幅な増加が見込まれる。足元では主要輸出品であるニッケルの収入が落ち込んでおり、キューバ近海の石油開発も未知数だ。安倍晋三首相は来月、キューバを初めて訪問する予定だが、今後の経済成長を見込み、これまで維持してきた2国間関係をさらに強める方針のようだ。
 キューバの通貨制度は、渡航者にとって紛らわしい問題がある。米国との国交断絶により、それまで流通していたドルが使用できなくなり、キューバ国民向けの人民ペソ(CUP)と対外貿易などで使う兌換ペソ(CUC)の2重通貨制度となった。レートは1ドル=1兌換ペソ=24人民ペソなので、今だと1兌換ペソ=約101円となる。観光産業が外貨獲得の軸となるなら、今後はペソ安に向かうだろう。経済の開放は「急がず、しかし遅れずに」の方針で、ペソ安もそれに連動した値動きとなりそうだ。

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