【COP】下げ渋る「ノーベル賞通貨」

 今年のノーベル文学賞に関しては、権威を批判してきたボブ・ディランが究極の権威の象徴ともいえる賞を受賞するのかとの視点で賛否両論がみられます。一方、コロンビアのファン・マヌエル・サントス大統領の平和賞受賞は半世紀以上にわたる内戦合意への努力が認められたとして納得する向きが多いのではないでしょうか。
 ノーベル平和賞の対象となったのは、1960年代から続いていた政府と左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍」(FARC)による内戦の終結に向けたサントス大統領の和平努力です。コロンビアにおける内戦は根が深く、FARCの起源となった「ラ・ビオレンシア」(暴力)時代に自衛集団が結成された1948年を内戦の発端とする説もあります。つまり、約70年にわたる暴力の歴史に終止符を打つ努力が評価されたといえるでしょう。コロンビア内戦について極右の準軍事組織による浄化運動として、人権侵害の責任が追及されてきました。
 この準軍事組織は、ゲリラだけでなくそのシンパと目される労働組合や農業組合のメンバーなどにも対象を広げ、暗殺や拉致を繰り返してきました。サントス大統領は2012年以降、キューバやノルウェーの仲介により政府とFARCとの和平交渉を進め、2013年以降は農業改革のほか内戦の責任や被害者補償など複数の議題で合意に達し、今年9月にFARCが和平協定を承認したうえで内戦終結を宣言しました。こうした長年にわたる内戦問題の解決は同国経済の安定化をもたらしており、資源安で値を下げた株価や通貨コロンビアペソ(COP)の下値を支えているようです。
 コロンビアは輸出品目のほぼ半分が原油で、資源安の影響をまともに受けます。原油価格の下落を背景に、コロンビアペソは2014年から2016年はじめにかけて1ドル=1800ペソから一時3400ペソまで下落しましたが、米利上げ観測が広がらないため足元では2900ペソ台まで値を戻しています。コロンビアペソは慢性的なインフレ圧力にさらされつつも、独自通貨単位として1810年に導入されて以来一度もデノミを経験していません。足元では産油国による増産凍結を受け供給過剰に対する過度の警戒が後退しつつあり、目先は安定した値動きが期待されます。
 ただし、内戦については、実はまだ解決していません。2016年10月2日に行われた停戦合意に関わる国民投票で合意は僅差で否決されました。前大統領のウリベ氏ら停戦合意反対派が主張するように、FARCメンバーが人質の拉致や殺人への責任を問われずに議席を得る疑念も根強く残されていたからです。それでもサントス大統領がノーベル賞を受賞できたのは、今後この問題が完全に解決されることへの期待が込められているからでしょう。

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