【NOK】ブレグジットで恩恵?

 10月27日に発表された英国の7-9月国内総生産(GDP)は予想を上振れたのにポンドの買戻しは進まず、「ハード・ブレグジット」への根深い懸念を感じました。その一方で、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う混乱に便乗し、EU非加盟国ながら有利な条件を獲得するため動き始めそうな国があります。ノルウェーです。
 北海油田の大半の油田とガス田は英国とノルウェーの経済水域の境界線付近に存在しています。ノルウェーは原油の輸出割合が約45%を占める世界でもトップクラスの産油国です。安定的な経常黒字国で投資先としても人気のようです。しかし、資源国は2014年半ば以降の原油価格の下落に影響を受けており、ノルウェーも例外ではありません。通貨クローネは資源安に連動して大きく下げ、2015年末から2016年はじめにかけては対ドルで9クローネまで下落。これにより2016年の経済成長率も1%を切る見通しとなるなど低迷が続いています。
 9月28日に開催された石油輸出国機構(OPEC)非公式会合で主要産油国が供給過剰解消に向け協調減産で合意したことを受け、クローネはいったん回復に転じました。ノルウェー中央銀行は10月27日に政策金利0.50%の据え置きを決定し、景気回復見通しを背景に利下げ観測は後退。しかし、産油国による協調体制には疑念が根強く、原油価格は思惑通りに回復しない可能性もあります。そうなれば、再び低成長に戻るでしょう。欧州向けを中心とするエネルギー輸出で得た収益は年金基金に積み立てられ、運用益は福祉に充てられます。資源は命綱であるため、輸出先のEUとの関係が重要なのは言うまでもありません。
 ノルウェーは現在、欧州経済領域(EEA)に加盟し、農業と漁業以外はEU加盟国と同様に単一市場にアクセスする権限が与えられています。EU予算も拠出するほか、原則的に人、モノ、資本、サービスの移動の自由をEUと共有しています。ただし、政策決定に参加できないというデメリットを抱えています。これが英国のEU離脱問題でよく聞かれる「ノルウェーモデル」です。120件以上の個別の協定を締結するスイスモデルよりも交渉は平易でコストもかからないと言われていますが、政策決定の場で発言権がないことは大きなハンデの1つです。
 英国のEU離脱論議をきっかけに、ノルウェーでもEEA協定をもっと弾力的に運用できるよう変更したいとの機運が高まっているようです。例えば、現在は国民1人当たりのEU予算拠拠出額は英国の8割程度にのぼるのに、政策決定には影響力がありません。ノルウェーでは1972年のEC、1994年のEUへの加盟について国家主権を理由に2度とも国民投票で否決されました。EU加盟への懐疑的な見方はさらに強まっているもようで、今後も正式加盟は見込めません。ただし、資源安が長期的にわたり続けば情勢は変わらざるを得ず、政策決定における発言力を確保したいとの狙いがあるのではないでしょうか。

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