【EUR】与党VS有権者

 12月4日実施の憲法改正の是非を問うイタリア国民投票が、目先のユーロ売り材料として警戒されています。否決されればレンツィ政権は退陣する見通し。来年春のフランス大統領選や9月のドイツ議会選に飛び火するとの観測から目が離せません。
 最近の欧州での選挙結果を振り返ってみると、ポーランドでは右派勢力が、ギリシャやポルトガルなどでは左派勢力がそれぞれ政権交代により与党になっています。各国の政治や経済の情勢が異なるので、おのずと方向性は違ってくるのでしょう。ただ、難民の受け入れ問題をめぐり右傾化する国があるのも事実ですが、共通項は既存体制の打破のようです。さらに言えば、「右」(保守)対「左」(リベラル)ではなく、「上」(与党)対「下」(有権者)という対立の構図になっているのではないでしょうか。民意を反映しにくい政治システムへの不満であり、有権者の投票行動としては非常に健全と言えます。
 英国は2015年の総選挙で与党・保守党が勢力を拡大したので例外的でしたが、今年6月の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票では、大方の予想に反してEU離脱を決めました。この時の「残留」「離脱」は、必ずしも政党で分かれていたのではありません。ですから、難民受け入れ問題などで「離脱」を選択したというより、キャメロン政権(当時)が「残留」を呼びかけていたからこそ、有権者は「離脱」を選択したのだと考えます。逆に言うと、キャメロン氏が「離脱」支持を訴えればもしかしたら「残留」だったかもしれません。ちなみに米大統領選も、クリントン氏は既成政治を嫌う流れにあらがえなかったことが敗因と考えられます。
 有権者のこうした反与党的な投票行動が続くとすれば、イタリアの国民投票ではレンツィ政権は退陣し、また同日実施されるオーストリアの大統領選のやり直しでは、与党が支援する左派候補を極右候補が下す結果になるかもしれません。そうなれば、フランス大統領選とドイツの議会選というEUの両コア国にも影響が及ぶとの見方が強まってきます。フランスのオランド政権はテロや景気低迷で退陣は必至の情勢。一方、今月20日にドイツのメルケル首相は4選を目指して出馬を表明しました。その際、安心感からユーロが買われたところをみると、ドイツにも反与党の流れが及んだ場合、ユーロは守り手を失うことになるでしょう。2002年12月以来、14年ぶりの1ユーロ=1ドル(パリティ)割れが迫ってきます。

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