【RUB】待ってました、大統領!

 「待ってました!」――米国のトランプ新大統領の就任に、ロシアの人々はそう掛け声をかけたい心境ではないでしょうか。プーチン大統領との信頼関係構築に意欲的な米大統領の登場で、米ロ両国は急接近すら見込まれます。通貨ルーブルの値動きにはそんな期待が見て取れます。
 ロシアルーブルは昨年11月8日の米大統領選の結果を受け、1ドル=64ルーブルから66ルーブル台まで急落したものの、その後は上昇基調となり12月に入るとさらに騰勢を強めます。11月30日の石油輸出国機構(OPEC)総会での加盟国による協調減産合意、12月10日の非加盟国の減産合意により原油相場が持ち直したことが主要因とみられます。ロシア経済にとって原油価格とルーブルの上昇は原油輸出には不利ですが、財政赤字の削減効果を考えればメリットの方が大きいといえます。1月10日に世界銀行が発表した2017年の世界経済見通しの中で、ロシアはマイナス成長からプラスに転じると予測されています。
 ロシアの株価も堅調地合いとなっており、すでにマネーの流入が観測されています。ルーブル上昇の要因は原油高以上に、米ロ関係の改善に向けた期待だと筆者はみています。トランプ氏がプーチン大統領との緊密な関係の構築を望んでいる、とみられるためです。プーチン氏と親交のあるエクソン・モービルCEOのティラーソン氏を国務長官に起用するなど、オバマ大統領とはおよそ異なる政策を採ることで両国の関係は劇的に改善するかもしれません。ことによってはウクライナ問題めぐる欧米の経済制裁が解除される可能性もあります。
 もちろん、政治家としての経験のないトランプ氏の対ロ外交が実際にどうなるか、不安はいっぱいです。1月11日の当選後初の記者会見では、CNNを「偽ニュース」呼ばわりして質問には答えないなど、超大国のリーダーとは思えない幼稚な振る舞いが目立ちました。ホワイトハウス記者会の夕食会のスピーチで、あるキャスターが「ジャーナリズムから身を引いて今はCNNで活躍している」と辛らつなジョークを放ったオバマ氏とは対照的です。トランプ氏のこの会見後にドルが売られたのは「具体的な経済政策への言及がなかったから」(市場関係者)ではなく、新しいリーダーの「知性学」リスクによるものだと推測しています。
 米国は現在、新旧大統領の政策的対立により国家としての連続性が断ち切られ、対外的にも付け入る隙をさらしています。こんな大統領でアメリカは大丈夫なのかとの疑念が強まれば、米国の株や債券、通貨は当然売られるでしょう。トランプ氏は選挙期間中にこれまでのドル高政策を批判していましたが、自身の大統領就任によって自然にドルが売られる状態になるのではないでしょうか。そして、米国から逃げていくマネーは、米国を裏で操ろうとするロシアに流入する可能性があります。ロシアが米大統領選にサイバー攻撃を仕掛けたのだとしたら、リスクを冒した甲斐はあったかもしれません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする