【MYR】金正男氏暗殺が上昇要因?

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏暗殺の現場となったマレーシアで、次期総選挙が前倒し実施されるとの観測が浮上しています。汚職疑惑に直面するナジブ政権は、この暗殺事件の取り扱いで支持を強め選挙を乗り切れば、株価の上昇を背景に通貨リンギは上昇に向かう可能性があります。
 金正男氏の暗殺事件は、関係する国々の思惑が複雑に絡み合っています。マレーシアと北朝鮮は長年にわたり友好関係を構築してきましたが、今回の事件で亀裂が入ったようです。また、実行犯とされる女性2人の国籍は、1人が友好国のベトナム、もう1人は仲が良くないとされるインドネシアで、やはり両国でも関心は強いでしょう。日本や韓国が北朝鮮の現体制に憎悪を募らせているのは言うまでもありません。北朝鮮の核開発監視を大義名分に韓国での高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備を正当化したい米国、北朝鮮と友好関係にある中国の両大国は、現時点で表向きは静観しているようです。
マレーシアは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中では特に貿易依存度の高い国で、リンギ安をテコに対中輸出を伸ばしてきたことが背景にあります。ただ、ここ数年の中国経済の失速により、マレーシアの外需優先政策は転換を求められています。ナジブ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)推進派。しかし、現在も影響力が大きいマハティール元首相が反TPPで内需拡大優先の主張を強めたことから、ナジブ政権は財政出動を拡大しており、政府債務の増大が懸念されます。マレーシアの2016年10-12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年比+4.5%と前期から改善したものの、2016年通年では+4.2%と2年連続で低下しています。
 一方、代表的な株価指数であるクアラルンプール総合指数は年初から5%上昇と堅調な値動きが続いています。選挙後に株価への寄与度が高い政府系企業に有利な政策を打ち出すとの思惑が広がっているためとみられます。目下、ナジブ政権のネガティブ材料は、自身の汚職疑惑です。2015年7月に、政府系ファンド1MDBからナジブ氏個人の銀行口座への約7億ドルの不正入金が報じられ、8月には首相退陣を求める大規模デモに発展しました。この時ナジブ氏は内閣改造で反対勢力を追い出し、政府に批判的なメディアを弾圧することで乗り切っており、こうした疑惑を払拭したいとの願いが現政権にはあります。
 そうしたなかで発生した金正男氏の暗殺事件。遺体の引き渡しなどをめぐり、マレーシアは足元では北朝鮮政府と対立しています。北朝鮮大使が、マレーシアが韓国など敵対勢力と結んで北朝鮮を窮地に追いやっていると主張したのに対し、ナジブ首相はマレーシアの当局は「断固とした態度を維持する」と述べています。こうした事件は政権の求心力を高めやすいものです。北朝鮮との貿易関係は微々たる規模のため、国交を断絶しても経済への影響は小さいようです。それよりは政権の基盤を強固にして国際社会の信頼を得た方が通貨リンギの下支えになるでしょう。

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