【USD】トランプ逆襲のドル高シナリオ

トランプ米大統領弾劾の裁判でリスク回避の円買い――市場関係者のその見立てに異論はないでしょう。しかし、女性スキャンダルで訴追されながら罷免は免れたビル・クリントン元大統領のケースのように、弾劾イコール失脚ではなく、そもそも弾劾自体が容易ではありません。その場合、トランプ氏が弾劾リスクを逆手に取り、窮地を切り抜けられたら今の向かい風は追い風に変わり、政権基盤が安定に向かう可能性もあります。

「ロシアゲート」でドル安警戒

5月に入りトランプ氏による連邦捜査局(FBI)長官の解任やロシアへの機密情報漏えいを受け、「ロシア疑惑」が一気に高まりました。ロシアの米大統領選の干渉やトランプ陣営との関係をめぐる疑惑は昨年の選挙期間中からくすぶっていましたが、今回のこの問題の捜査に司法省が特別検察官を任命する事態に進展したことで、現職大統領の弾劾に現実味が増したとの見方が出ています。当面の焦点は、解任されたコミー前FBI長官も出席し、30日以降に開かれる上院公聴会です。仮にコミー氏の証言内容でトランプ氏による司法妨害やロシア側との共謀関係が裏付けられれば、弾劾の可能性は濃厚になります。
市場には警戒が広がり、基調は当初のリスク回避の円買いからドル売りに変わっています。恐怖指数も上昇しており、このまま思惑通りにトランプ大統領の弾劾・罷免の展開となればドル売りはさらに強まるでしょう。足元の水準を考えれば、昨年の大統領選直後の「トランプ・ショック」で付けた101円19銭が下値メドとして意識されやすいとみています。

「オバマケア」廃止が焦点

 仮に弾劾裁判で訴追されれば、1998年12月のビル・クリントン氏以来、19年ぶりということになります。実習生との「不適切な関係」で、クリントン氏は下院の訴追による上院での弾劾裁判では「有罪」に必要な3分の2には達せず、罷免を回避された経緯があります。トランプ氏も訴追のタイミングで、4月のシリア攻撃のようにどこか特定の国を選んで戦争を仕掛け、問題から目を逸らせる可能性もあります。
公聴会の後は、トランプ弾劾裁判の前哨戦としてオバマケア(医療保険制度改革法)代替法案の審議が注目されそうです。同法案は3月、共和党が票数不足により撤回したものの、下院で今月4日、217対213の僅差で可決されました。上院での通過は難しいとされる同法案が可決されれば、仮に今後弾劾裁判に発展しても罷免を免れる可能性が高まるとみられます。同法案の審議が事実上の弾劾裁判といえます。そうなれば円買いは限定的となるでしょう。

ドル反転はいいこと?

直近の世論調査でトランプ氏の支持率は38%となり、今年1月の就任以来、最低の水準に落ち込んでいます。確かに就任から100日あまりでこの低支持率は心もとないのですが、2001年に就任したジョージ・W・ブッシュ大統領の2006年当時とほぼ同水準でもあり、まだ「危険水域」とまではいえません。オバマケア代替法案が成立すれば減税を柱とした経済政策などの進展も見込まれ、ドルは買戻しが強まるかもしれません。現状では想像しにくいものの、一連のロシア関連捜査が完了した結果お咎めなしとされれば、トランプ氏の支持率は底を打ち、政権基盤が盤石になるのではないでしょうか。もちろん、ドルも上昇基調となるでしょう。

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