【IQD】政治は先読み困難も通貨は安定

中東で主導権を争うサウジアラビアとイランに挟まれたイラク。そこにイスラム教の宗派やクルド民族との対立が絡み合い、同国の政治情勢はさらに複雑化しそうな様相です。こうした不安を抱えているものの、現時点で通貨ディナールは安定的に推移しています。

イスラム国掃討に成功しても新たな火種

イラクの治安部隊は北部の都市で、イスラム過激派組織イスラム国が拠点としていたイラク第2の都市モスルを今年6月末に奪還し、今月21日には同じ北部のキルクーク郊外にあるハウィジャへの侵攻を開始しました。アメリカ軍などが空爆を支援しているもようですが、反イスラム国で協力関係になったクルド自治政府の部隊は、今回は加わっていないと伝えられています。
キルクークには油田があり、イラク政府はクルド自治政府とその帰属をめぐって対立するなか、同自治政府は今月25日に独立を問う住民投票を実施する予定で、イラクがこれに反発しているためです。イラクは今後、仮に同国からのイスラム国掃討に成功したとしても、今度はクルド自治政府との関係が悪化し、新たな紛争や内戦などに発展する可能性が出てきました。

サウジとの関係改善で国内安定化に向かう?

一方で、イラクはスンニ派偏重のフセイン政権が崩壊後、マリキ首相はシーア派優遇の政策を実施しましたが、2014年9月に就任したシーア派のアバディ首相はスンニ派にも配慮した政策により国内の融和を進めています。6割超がシーア派で、同派主導の政権は同じシーア派が多数のイランとは密接な関係にありますが、イラク国内にはイランの支配的な状況を好ましく思わない向きが多いようです。
イラクのシーア派で影響力のあるサドル師がスンニ派が多数のサウジを訪問したことは、サウジによる対イラン外交で重要な意味を持ちます。湾岸の盟主であるサウジがイラクとの関係を強めれば、イランが地域で孤立化するためです。一方、来年予定されるイラクの議会選でシーア派による政権は維持されるかもしれませんが、宗派間の対立が和らぎ、国内の安定につながる可能性があります。

通貨ディナールはビジネス拡大で流通も

イラクはこのように、宗派や民族、周辺国との関係などが複雑に絡み合い、政治情勢の先行きは読み切れませんが、通貨ディナールは比較的安定した値動きのようです。フセイン政権崩壊後、連合国暫定当局から新イラクディナールが発行されました。イラク中央銀行は2009年以降、1ドル=1170ディナールを公式レートとし、足元はほぼそのレート付近で推移しています。
少し前にはイスラム国の台頭や原油価格の急落の影響で経済成長が大幅に鈍化し、ディナールが混乱した時期もありましたが、足元は落ち着きを取り戻したようです。今後湾岸諸国との関係改善でビジネスチャンスが広がれば、ディナールが国外でも流通し始めるでしょう。政治情勢の先読みは困難ですが、当面は通貨の安定が続くかもしれません。

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