【THB】2018年は激辛相場か

タイ政府のコメ買取り制度で有罪判決を受けたインラック前首相が、国外に逃亡したと伝えられています。来年にも実施が予定される総選挙では、「タクシン派」「反タクシン派」の長年の対立構造が鮮明となり、通貨バーツの値動きにも影響を与えそうです。

プミポン国王死去後も経済の好調を維持

プミポン国王(ラーマ9世)死去から間もなく1年。タイ経済は混乱に陥ることなく成長が持続しています。国内総生産(GDP)は国王死去で消費はやや落ち込んだものの、それでも2016年10-12月期は+3%を維持。今年1-3月期は+3.3%、4-6月期は+3.7%と2013年以来の伸びを示しました。タイの主要株価指数SETも4-6月期GDPの発表後に1600ポイント後半まで上昇し、4年ぶりに最高値を更新しました。
バーツも好調な国内経済を反映し、今年に入って上昇基調を強めており、9月には2015年4月以来、1年5カ月ぶりに33バーツまで上昇しています。1月からは10%近く値を切り上げました。ただ、足元のバーツ高は輸出産業の成長の足かせになりかねないとして、一段の上昇には警戒も広がっています。タイ中銀は2015年4月から、政策金利を1.50%に据え置いていますが、目先も引き上げは困難とみられます。

バーツ高を阻止するのは政治情勢の混乱か

バーツの一段の上昇を阻止する要因があるとすれば、政治の混乱でしょう。現在のタイ政府は、立憲君主制に移行した1932年以降19回目のクーデターで2014年5月に成立した軍事政権です。総選挙・民政復帰への環境整備を進めるスタンスを掲げており、早ければ来年にも実施される総選挙では、軍事政権に追われたタクシン派でポピュリズム系のタイ貢献党(PT)が巻き返しを狙っています。
2011年7月に行われた総選挙では、PTの勝利でタクシン・チナワット氏の妹、インラック・シナワトラ氏が首相に就任しました。しかし、それに先立つ2010年のタクシン支持派などによる反政府デモへの弾圧に関連し、2013年11月以降は逆にインラック政権に対する反政府デモに発展。インラック首相はその後議会を解散し、翌2014年2月に総選挙を実施して政権基盤の強化を目指しましたが、裏目に出ます。

インラック氏の国外逃亡でタクシン派は?

その選挙は無効となったほか、さらにインラック氏は在任中の人事が職権乱用とされ、失職。また、在任中に政策として進めたコメ買取り制度が国庫に損害を与えたとする行政裁判をめぐり、インラック氏側は最高裁に上訴しましたが、9月27日の判決公判で禁固5年の実刑判決が決まりました。インラック氏は判決前に国外逃亡したとみられ、それによりタクシン派の結束が強まる可能性もあります。
こうした経緯から、次期総選挙での「タクシン派」「反タクシン派」の対立は避けられないでしょう。昨年死去したプミポン国王は官僚・軍部など利害調整で手腕を振るい、国民から絶大な支持と敬愛を受けました。しかし、後を継いだワチローランコーン(ラーマ10世)は王子時代から遊び人として世界的に有名で、調停役として事態の収拾に乗り出すといった展開は期待できず、バーツ安局面でも抑止力にはならないとみられます。

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