【JPY】米朝対話期待はすでに収束

平昌オリンピックは東アジア地域の安定化に向けた五輪外交の場となり、訪韓した北朝鮮代表団の発言から米朝対話実現への期待が高まっています。ただ、金融市場にはリスク選好の動きが観測されたものの、長続きはしていません。

米朝対話期待で円売り、でも実現可能性は?

平昌オリンピックは、珍しく政治色の強い祭典となりました。2月9日の開会式には韓国の文在寅大統領はもちろん、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹である与正党第1副部長、日本の安倍晋三首相が出席。また、25日の閉会式は文大統領のほか、北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長、アメリカのトランプ米大統領の長女、イバンカ大統領補佐官が顔をそろえ、さらに次回北京大会のPRで中国の習近平国家主席がビデオ出演しました。
その後、文大統領が米朝対話の必要性を強調し、北朝鮮の金副委員長はその「用意がある」と述べています。翌26日の金融市場では手がかりが乏しかったせいもありますが、米朝対話実現への思惑から日経平均株価が強含み、リスク選好的な円売りがドルをはじめ主要通貨を押し上げます。実際に米朝対話までこぎ着けるかどうかはわからないものの、とりあえず東アジアの緊張が和らぐとの見方が広がったことは事実です。

米朝に憎悪の歴史、90年代から続く非核化問題

ただ、米朝関係が良好だったことは、歴史的にほとんどなかったと思われます。アメリカは1860年代、李氏朝鮮に通商交渉を求め、その際に武装商船ジェネラル・シャーマン号の船員が入国をめぐるトラブルで殺害されます。報復である辛未洋擾を経て、1882年に両国は通商関係を結んだものの、朝鮮半島の分断やその後の朝鮮戦争、ポプラ事件など、調べてみると両国がいかに憎悪し合ってきたかがよくわかります。
国交は途絶えたまま、1990年代にクリントン政権下のアメリカが動き始めます。南北朝鮮により朝鮮半島の非核化が宣言されたにもかかわらず、アメリカの撮影した衛星写真から北朝鮮の核開発に疑念は強まり、国際原子力機関(IAEA)による査察の必要性が出てきました。こうした問題で緊張は高まり、北朝鮮を訪問したカーター元大統領を仲介役に非核化に向けた米朝の交渉が実現しました。

カーター氏訪朝か、米共和党は中間選挙を意識

「アメリカの狂った老いぼれ」「チビのロケットマン」などいい年をした大人のやり取りとは思えない両国の「首脳」による非難の応酬の裏側で、対話の実現に向け事務方は交渉を続けているようです。カーター氏は仲介役として再訪朝に意欲をみせているようです。ただ、対北朝鮮で強硬姿勢をとる共和党が、民主党の同氏の協力を得るような流れは考えられません。今年11月の中間選挙をにらむと、なおさら困難だと思われます。
振り返ってみると、米朝関係はクリントン(民主党)政権時代に過度な緊張は緩和に向かったものの、その後のブッシュ(共和党)政権で決定的に悪化しました。トランプ(共和党)政権で改善するとは考えにくいのではないでしょうか。平昌オリンピックの開会式でトランプ、金正恩両氏のそっくりさんがみせたフィスト・バンプは幻想にすぎず、米朝対話期待の円売りはすでに収束したもようです。

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