ゴーン氏のレバノン入国でトルコリラへの影響は?

カルロス・ゴーン元日産会長が保釈中に父親の母国であるレバノンに入国したことは、為替市場にどのような影響があるでしょうか。報道を受け、今後の中東情勢への思惑からトルコリラの売り買いがやや交錯。新年から値動きが注目されそうです。



ゴーン氏報道受けトルコリラに動意

会社法違反で特別背任などの罪で起訴されていたゴーン氏は、この春からの公判を前に保釈されていました。しかし、2019年4月の保釈条件として海外への渡航を禁じていましたが、極秘裏に日本を出国し12月31日正午すぎに父親の母国レバノンに入国したとの声明を発表。衝撃的なニュースは世界を駆け巡り、イギリスのBBCはトップニュースとして繰り返し報じています。

金融市場は12月30日の取引が実質最終日。年末に向けた持ち高調整によるドル売りが主体となりました。また、米中貿易協議の部分合意を背景とした安全通貨売りが広がり、ドルは主要通貨に対して値を下げます。その流れでドル/円は109円を割り込みました。地政学リスクによる円買いでドルは108円半ばまで売り込まれますが、終盤は値ごろ感による買戻しで下げ止まりました。

ゴーン氏が日本の地方空港を出発し、トルコ経由でレバノン入りしたとの報道は、そのタイミングで市場に伝わったと思われます。レバノン通貨ポンドは、2006年から1ドル=1507.50ポンドで固定されており、変動は限定的。一方、トルコ政府が同氏の帰国に関与した可能性からリラがドルや円に対してある程度の値動きがみられ、方向感の定まらないまま取引を終えました。

レバノンの英雄帰国で中東に安定も

リラ買い要因として考えられるのは、レバノンで英雄視されるゴーン氏が今後リーダーに就任し経済の混乱が収束に向かえば、中東情勢がある程度安定に向かう、との見方が背景にあります。国内経済は貧富の格差が急速に拡大し、不満が噴出。昨年10月にハリリ前政権による無料通信アプリへの課税をきっかけに反政府運動が全土に広がり、首相退陣などで政府は無力化しています。




他方、実業家であるゴーン氏が仮に指導的な立場となっても、政治家としての力量は未知数との見方もあります。宗教や宗派、あるいは地域大国間どうしの利害が複雑に絡み合った政治情勢を和平に導くには限界もあるでしょう。レバノンの反政府組織ヒズボラはシリアのアサド政権を支持し、トルコはアサド政権に歩み寄るクルド人勢力への攻撃を停止しましたが、停戦破棄もありえます。

そうした不透明感がリラの売り買いにつながったのかもしれません。日本とレバノンには犯罪者の引渡し条約がなく、ゴーン氏の日本への強制送還は今のところ想定されていないようです。同氏は今後、日本に対し拘留中の扱いなどを含め自宅のあるベイルートから見解を発信していくとみられます。欧米メディアの注目度も高く、レバノンにとっては明るいニュースと言えそうです。

ゴーン氏の出国の足取りについては、12月29日深夜に関西国際空港から小型ジェットで出発した後ロシア空域を通過し、トルコに入国。その後航空機を乗り換えてレバノン入りしたと報じられています。トルコ政府がこの問題にどの程度関与したかは不明ながら、年明け直後のリラの値動きは目が離せません。
(おわり)

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